――まず、お伺いしたいのですが、この『Egg Man』というストーリーを作るにあたって、こだわった部分はどこですか?
一番大事な部分として、記憶に強く残るような、エッジの立った話にしたい、というのがありました。残酷な場面はもちろん入れますし、ショッキングな場面もあるのですが、その表現を適当な所で誤摩化すのではなくて、突き抜けて表現したいという思いが強くありましたね。
この作品を観て頂ければ分かるのですが、ストーリーに大どんでん返し的な要素を含ませているので、それが分からないように新しい情報をどんどん入れて、観ている人に先読みをさせないようにしようと心がけました。全体的な印象としては、SFの作品ではあるのですが、ちょっとゴシックっぽくしたかったですね。だから冒頭の教会のシーンなどは、僕の考えているイメージに合っていてとても良かったです。
――この『Egg Man』を映像化すると聞いて、どのように感じましたか?
いや〜〜日本のクリエーターは勇気があるな、と(笑)。だって、僕の作品は残虐な描写や、SF的な場面などが多くて、映像化しにくいんじゃないかって思ってましたからね。
僕が作り手として考えていることの一つは、メインストリームの作品に飽きちゃった人たちに向けて作品を作る、挑戦することに意義があるのではないかということです。一般の人達、つまり老若男女の人達に伝えることのできる作品を作れる方は多くいるわけで、そこで勝負するというスタンスじゃないんですね。
そういうことを踏まえると、例えばこの作品はグロテスクな描写ばっかりだから、映画化されるとか、テレビで流すとか、それは不可能でしょ?(笑)。だからこうやって映像化をDVDというメディアだけでやるというのは面白いな、と思いましたよ。
――なるほど、それでは実際に映像化された『Egg Man』を観てどうでしたか?
うん、すごく自分のイメージに近いですよ。
僕はずっと色々な殺人者の資料を集めているんですが、大量殺人者と連続殺人者の特徴っていうのは大きな違いがあるんです。
大量殺人者というのは、あんまり近寄りたくないなとか、あの人ちょっと怖いなとか、要は我々がよく考えているような「殺人者」のイメージに近いですよね。どうしてかって言うと、大量殺人者は時間をおかずに一気に殺すことが多いですよね?
それと逆に、この「Egg Man」のような連続殺人者は、捕まらないようにしながら殺しを何度も続けなくちゃいけないから、ある意味で人間として魅力的な場合が多いんです。例えば話が面白かったり、清潔感があったり、頭が良さそうだったり、お金も持っていたり、仕事で成功してたりとか。
そんな連続殺人者が殺す対象というのは、不特定多数で誰でもいいから殺すのではなくて、かなり選んで殺すことが多いんですよね。例えば18歳から22歳の未婚の女とか、色が白いとか、そういう意味では、コレクター心理と似ている部分がありますね。
そういうことを考えると、この『Egg Man』での演出は、主人公の連続殺人者をよく表現していると思いますね。
――この作品をご覧になる方にメッセージを。
観客の方達は意識されていないことが多いかと思いますが、今まであるエンターテインメントの多くは、ある種制限された枠の中で作られているものが多い。やっぱりそれは道徳の問題などがからんでくるわけで、公共の電波に乗せることが出来なかったり上映・出版できなかったりしますからね。そんな中でこの作品は、そのような枠や制限が一切無いところで表現した作品であるので、そんな主流の作品、メインストリームの作品では決して見ることのできない部分を楽しんで頂ければと思ってます。
――ありがとうございました。

数々の女性を殺し、ついに逮捕された猟奇殺人犯「卵男(エッグマン)」。独房に収監された彼は、隣室の囚人205号と親交を交わす。意味不明な言葉を繰り返す囚人205号の様子から、あることに気がついた卵男(エッグマン)は、彼を自らの次なる犯罪のために利用しようと画策する。しかしそこにはエッグマン自身が知らない衝撃の事実があったのだ…。

独特の文体、世界観から近年のホラー・サスペンスジャンルで唯一無二の存在として評価が高い。読書中の緊張感と、急転直下の展開が読者に麻薬的な爽快感を与え、「中毒患者」とすら評せられるコアなファン層を形成している。2006年に短編「独白するユニバーサル横メルカトル」で第59回日本推理作家協会賞を受賞。著作に『怖い本』シリーズ、『東京伝説』シリーズ、『鳥肌口碑』、『メルキオールの惨劇』、『いま、殺りにゆきます』など。


