Perfumeを手掛けるcapsule中田ヤスタカの秀逸なプロデューシングによって、ダンス・ミュージックがお茶の間に浸透した昨今の音楽シーン。しかし、エレクトロはいつの間にかにテクノ・ポップの呼称にすり替えられる一方、ある程度のクオリティの楽曲をコンピューターで簡単に、そして、安価に生み出せるようになった制作環境の変化がトラックの氾濫を助長。つまり、現行のエレクトロニック・ミュージックはカオス状態にあるというわけだ。
そんなスタンダードなき時代に3人組バンド、ザ・ジェッジジョンソンはロックのライヴ感とエレクトロのプロダクションがせめぎ合った新作アルバム『12WIRES(トゥウエルブ・ワイアーズ)』を解き放つ。エレクトロのプチ・バブルに沸く現在の状況に先駆け、活動を行ってきた彼らはそんな現状を前にして何を思うのか。楽曲制作の核を担うヴォーカルの藤戸じゅにあに話を訊いた。
──このバンドを始める前はデス・メタルのバンドをやっていたそうですね。
はい。学生時代はヘヴィー・メタルが好きで、そういうバンドをやりつつ、並行してテクノのパーティにDJとして参加していました。もともとジャンルにこだわりなく、色んな音楽を聴いていたんですけど、メタルとテクノは音圧に惹かれていたんです。あと、どちらの音楽もループが元になっていて、そのループから高揚感を引き出していく音楽じゃないですか。だから、メタルとテクノはパッケージが違うだけで、根本は似ているなと思ってましたね。
──クラブ・ミュージックに開眼した作品や体験って具体的に何かあったんですか?
一番大きかったのは、昔、NINJA TUNEナイトが渋谷のON AIR EASTとWESTの2会場であって、DJ KRUSHとかDESERT STORMとか色んなアーティストが出ていたんですけど、大トリで出てきたCOLDCUTですね。音と映像、あとインターネット・カルチャーのメディア・ミックスというか、インタラクティヴな要素とサンプリングのカット&ペースト感覚に衝撃を受けて、自分たちも"こういう手法の音楽をやりたい"って思ったんです。
──その後、活動を開始したザ・ジェッジジョンソンですが、ドラムレスで打ち込み主体の形態ゆえにライヴハウスから出演を断られることもあったとか。
エレクトロとかエレクトロニカって言葉が一般化したのはここ2、3年だと思うんですけど、それ以前はDTM(Desk Top Music)とか打ち込みバンドって言われて。そういう呼び方って、差別用語というか、僕はすごい嫌いで。まるで生音の代用みたいな言い方というか、生音至上主義みたいな響きがあったというか、リスナーもそういうメディアの打ち出し方に惑わされてしまっていたというか。でも、僕らはそういう風潮に迎合するのは違うなって思ったんです。音楽であれば、どこであっても、それがライヴハウスだろうがクラブだろうが、問題ないはずだって。そういう反発心を抱えつつ、バンドをやり続けて現在に至る感じですね。
──その逆風が追い風に変わってきたのは?
ここ2、3年ですね。ただ、ジェッジにエレクトロな要素が入ってることは自分たちが打ち出しているフィールドでは伝わってきているんですけど、エレクトロが何なのか、その概念が明確に確立していないにも関わらず、ジャンル分けが先行しているので、"じゃあ、実際のところ、ジェッジは何系なのか?"っていう話になってしまうんですよ。だから、今回のアルバムではジャンル云々ではなく、エレクトロっていう概念を逆手に取って、バンド・サウンドを主軸として、そこにどれだけ電子音を重ねられるかってことをテーマに置きました。つまり、ロックのフィールドでジェッジの音楽が形容しがたいのであれば、逆にバンド・サウンドに特化しながら、同時に電子音の部分を緻密に作り込んでみようってことですね。
──ザ・ジェッジジョンソンのライヴを拝見すると、作り込んだ作品と同等のパフォーマンスを展開していて、再現性、発展性に関して、かなり考えられていますよね。
基本的にライヴでの再現性を念頭に置いて、作品制作に臨んでいるんです。今って、誰が演奏しているのか分からない時代じゃないですか。ヴォーカルは初音ミクみたいなヴォーカロイド・ソフトに歌わせることが出来るし、音源もネット上で簡単に発表出来るようになって、インディーズとメジャーの垣根がなくなってしまった。その"垣根がなくなった"っていう物言いは聞こえこそいいものの、実際は責任の所在が曖昧になって、誰の音楽でもいいっていう無責任なものになってしまった。
──いわゆる"myspace現象"と呼ばれる現在の状況ですよね。
で、無責任なものが増えると、相対的にクオリティが落ちて、カオス化していくと思うんです。そうなった時、その曲が誰のものであるか、誰が発信しているのか、そのアイデンティティが問われるんじゃないかと。そこで考えた時、自分たちが育ってきたのはライヴハウスだし、ライヴ・サウンド、バンド・サウンド、要はクラブ・フィールドとは違う激しさや熱さだろうと。今回のアルバム『12WIRES』に関しては、そうしたテーマのもと、ロックのエレメントと電子音楽をぎりぎりのラインまで詰めていったんです。ぱっと聴いて頂いた印象そのものの再現は出来ると思うんですけど、そういう顔の見えない世界で顔の見える音楽をいかに作っていくか。それは今後も大きなテーマだと思っていますね
バンド・サウンドとしての再現性を主軸に、エレクトロニック・ミュージックの要素を緻密に練り込んでいったアルバム『12WIRES』。同時に彼らはかつてのゲーム機や初期のコンピューターで使われていた8bitのプリミティヴな音源チップのサウンドにフォーカスを当てた"チップ・チューン"の手法を要所要所に取り入れているという。この作品で彼らが向かったハイ・テクとロウ・テクの共存は、ダンス・ミュージックの長所である匿名性を記名性の高いバンド・サウンドに転換しながら、ザ・ジェッジジョンソンの"顔"を映し出している。
Text by Yu Onoda

池橋壮一:Guitar 、中沢大介:BaseLine 、藤戸じゅにあ:Vocal/Guitar/Sampling 、(タナカジュン:Guest Drum) 今でこそ、打ち込み音主体のバンドも多くなってきたが、当時ドラムレスであったり、バンド形式ではなかったジェッジはライブハウスの出演を断られたりと活動を制限されていた。当時からジェッジのことを認めてくれていた下北沢のライブハウスを中心に活動を行っていたところ、その精神性やジャンルにとらわれない独自の音楽表現方法、ライブパフォーマンスから話題となった。自主制作での音源の発表を繰り返し徐々に知名度を増し、下北沢界隈では有名な存在となった。自主制作にも関わらずその音楽のクオリティーは当時から国内外で高い評価を得ていた。2007年にUNITED TRAXの第一弾アーティストとして本格的に活動を開始したジェッジは全国的にはほぼ無名にも関わらず夏、冬に行われる日本最大級のロックフェス「SUMMER SONIC」や「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」に出演を果たした。2008年4月に発売したアルバム「Discoveries」はアーティストや音楽評論家など多くの人から高い評価を得て、一躍その名を業界内に広めた。
- 01. HEADLINER OF THE YEAR
- 02. 陽の当たる場所へ
- 03. for the Right time
- 04. WIRES segment #1
- 05. Vivas the RIOT
- 06. Pixelstorm
- 07. WIRES segment #2
- 08. Cook it
- 09. Pizza
- 10. WIRES segment #3
- 11. on the White line
- 12. 20miles
- 13. WIRES segment #4
- 14. 百年の花
- 15. Say YEAH
- 15. CONTINUE?



