
高橋 幸宏 「World Happiness」 「pupa」 を語る!!
この2〜3年、元YMOというか現HASYMOの3人の元気ぶりが目立っている。教授は主宰するCommonsレーベルでの活動を中心に環境問題にも相変わらず積極的だし、細野晴臣は、相次ぐトリビュート・ワークに後押しされるように、先日遂にデイジーワールド・ディスクも再開させた。そして、高橋幸宏。シンガーの原田知世をはじめ、高野寛や高田蓮などの手ダレを集めた新バンドpupa (ピューパ)を結成し、デビュー・アルバム『floating pupa』を先日発表。更にこの8月10日には、「World Happiness」と名づけられた野外音楽フェスのキュレーターを、アート・ディレクターの信藤三雄と務める。出演者はpupaやHASYMOを筆頭に、鈴木慶一(Captain HATE and The Seasick Sailors feat.曽我部恵一)、東京スカパラダイスオーケストラ、GANGA ZUMBA、BONNIE PINK、リリー・フランキー、NRT320(信藤三雄+成田真樹)、シーナ&ロケッツ、東京ブラボー他。豪華にしてシブいラインナップの統一感に、“さすが幸宏!”の声が方々で上がっている。まずは、そのイヴェント、新木場の夢の島公園陸上競技場で開催される「World Happiness」に関して、立ち上げの経緯やコンセプトから語ってもらおう。
「近年僕は、スケッチ・ショウで国内外のいくつかのフェスに出ましたが、ソナーなど海外のフェスには、なんか統一感があるんですよ。出演者の音楽スタイルではなく、カラーというか匂いというか。そういう点をより考慮したフェスが日本にももっとあっていいんじゃないかなと感じていたわけです。興行として成功させることももちろん大切だけど。で、信藤さんに相談したら、『遠くに行くのはいやだ。テントもいやだ』と(笑)。確かに僕も、釣りにはよく行くけど、テントには泊まらないし。もっと気軽にアクセスのいい都心で、しかも緑も多い場所でできないかなと。しかも、ダラダラやらない。2時から8時までにきちっと収める。ステージもメインとサブが一つずつで、一つのステージをやってる間にもう一つでセッティングして、ひっきりなしにライヴが行われる、と。信藤さんからは、出演アーティストに関してもたくさん提案してもらいました」
それにしても、高橋幸宏の繊細なパブリック・イメージと夏の野外フェスってのは、あまり合わない気もするのだが。
「いや、元々好きなんですよ。古くは83年に、ビル・ネルソンとかと一緒に箱根の野外でやったこともあったし、一昨年ライジング・サン・フェスに出た時も、すごく楽しかった。それに、今僕のやってるエレクトロニックな音って、意外と野外にマッチするし、また、僕自身の抒情性ってのも野外に合う。pupaの音も、野外音楽っぽいしね」
そのpupaだが、一昨年の高橋の傑作ソロ・アルバム『BLUE MOON BLUE』の参加主要メンバーを核に構成されている。まさに、メンバー一人一人が一国一城の主といった趣で、実際『floating pupa』ではどの曲も、各人のキャラがしっかり立っている。が、それでいて、全体の統一感も見事。エレクトロニカのニュアンスを随所に散りばめた抒情的世界は、高橋幸宏のポップ・マエストロぶりを改めて強く印象づけるものとなっている。
「その各人のキャラをいったん全部壊して一つにする手もあったんだけど、それだと倍の時間がかかると思って。だから、各々のキャラをそのまま生かしつつ、どううまく一つの世界につなげるべきかだけを考えて、後はほっといたんです」
ユニット名のpupaは「さなぎ」という意味。そこに込められた意図は?
「フローティング・ピューパって名前の、フライ・フィッシングのフライがありまして。本来、ピューパから羽化して成虫になるわけだけど、羽化しそこなって川面を流れていってしまうさなぎがいる。それがフローティング・ピューパ。成虫になれなくて流れていってしまうという、ちょっと寂しい状況なわけだけど、実はさなぎでいる時が虫にとっては一番いいのかなとも思うんです。かげろうなんて、成虫になっちゃうと4日ぐらいで死んでしまうしね」
なんとも高橋らしい、リリカルなネーミングではある。
「このユニットならではの心地よさ? それは、ユルさですね。全員、考えてることも性格もバラバラだし、とにかくユルユルなの。だけど妙にまとまっている。だから楽しい」
そして、その独特のユルさは、件の「World Happiness」を語る際重要なポイントでもあるようだ。
「そう。このフェスは、ユルいんです。楽しくやろうよ、ハッピーになろうよ、仲間や家族と一緒に、お決まりの形じゃなく…そんな感じですね」
ちなみに、現場には託児所もあるそうだ。
(text by 松山晋也)

1952年6月6日生まれ。サディスティック・ミカ・バンド解散後、サディスティックスを経て、78年、細野晴臣、坂本龍一とともにイエロー・マジック・オーケストラ (Y.M.O.)を結成、83年12月をもって「散開」。ソロとしては、78年のアルバム『Saravah!』以来、2006年の『BLUE MOON BLUE』までに通算21枚のオリジナル・アルバムを発表。2001年、細野晴臣とSKETCH SHOWを結成。現在は細野晴臣、坂本龍一とともにHASYMOとして不定期に活動中。2008年7月、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦と結成した新バンドpupa(ピューパ)のデビュー・アルバム『floating pupa』発表。音楽家としての顔を持つ一方、ファッション・デザイナーとしても長いキャリアを持つ。

音楽評論家。89〜97年スタジオ・ボイス編集部に在籍(95〜97年は編集長)。著書に「めかくしプレイ〜Blind Jukebox」、監修・共著に「プログレのパースペクティヴ』(共にミュージック・マガジン社)。雑誌で連載多数。






