宇野 : 資金に関して言うと、『PLANETS』はもう少しかかってしまっていますが、上手くやれば100万150万で作れるはず。今の日本社会で、健康な身体を持っていれば100万なら頑張れば稼げますよ(笑)。
100万稼げば雑誌を作れるんだからみんなやりましょうと僕は言いたいんです。
例えば『早稲田文学』(*1)は川上未映子(*2)を輩出することによって良くも悪くもシーンの介入に成功しています。つまりそこまで大部数ではない小部数雑誌でもシーンに介入できるわけですよ。
100万円で文化シーンに介入することはできるので、プレイヤーが増えることを僕は望みます。
武田 : あらゆる場所での局地戦を望むと。
宇野 : その方が、世の中賑やかになって良いと思います。
武田 : 潜在的な読者が増えるということでもありますね。ただ、例えば宇野さんが批判されているブログ論壇やワナビーみたいなものも同時に増えてくるのでは?
宇野 : 規模が大きくなれば、そりゃそうでしょう。彼らの目的は、単に「宇野や東はわかってないよな」と盛り上がることですから、実際にいい仕事をしてシーンに介入するような方向には行かないでしょう。その手の輩にその力があるなら、今の批評シーン、カルチャーシーンはまったく別の面子によって担われていたはずです。
黒瀬 : 承認を求めているだけですからね。
要は、〈ミニコミ2.0〉的なパワーゲームの見取り図がちゃんと見えるようにすればいいんじゃないですかね。つまり、そういう承認欲求だけでやっているミニコミはすごく古く見えて、コンセプチュアルで戦略的なミニコミは全く別の形態に見えてくるような。
宇野 : つまり文フリでは通用するけどブックファーストでは通用しないミニコミというところで明確な線が引ける。
武田 : それはすごくわかりやすいですね。そういう時代だからこそ、書店員の審美眼というのも重要になっていくでしょうね。
宇野 : 今ミニコミブームがあるとしたら、それははっきり言っていわゆるカリスマ書店員の目利きによって支えられています。彼らが異常にアンテナが高く、下手な評論家や作家よりも本を読んでいて、かつwebもちゃんとチェックしているから、僕らの本を置いてくれているわけです。やはりどんどん沈没していったゼロ年代の出版文化をかろうじて支えていたのは彼らの自主的な努力だったということなんだけど、逆にそれは業界の脆弱さも示している。あまりにもそれぞれが抱えるカリスマ書店員個人の能力に、今の書店というシステムは負い過ぎているという問題もあると思う。
武田 : つまり、書店員の能力の底上げも必要になってくる。
黒瀬 : 次世代のカリスマ店員たちが読むような雑誌にするというのも〈ミニコミ2.0〉のミッションですね。
武田 : 言ってしまえば、「読者を育てる」ということでしょうか?
宇野 : 「育てる」なんてのは傲慢な表現だと思うけど、象徴的な意味で第二、第三のカリスマ書店員に出てきてもらうために、あるいは未来の編集者に「こんな本が作りたい」と思ってもらえるように、彼らに支持され、彼らのような読者を育てることができるミニコミを作っていきたいですね。
橋本 : そうですね。
武田 : そこに今回の〈ミニコミ2.0〉座談会及び書店フェアで貢献できればと思っています。
*1 : 1891年に坪内逍遥が創刊した文芸誌。2007年以降、太田出版から発行されている。
*2 : 作家・詩人・ミュージシャン。『ユリイカ』、『早稲田文学』などに作品を発表し、2008年に「乳と卵」で第138回芥川賞を受賞。
■宇野常寛
1978年生まれ。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。『PLANETS』編集長。2008年、批評家として『ゼロ年代の想像力』(早川書房)を上梓し、話題をさらう。ミニコミながら全国規模で展開され、商業誌に匹敵する『PLANETS』をほぼ独裁体制で推し進める敏腕の編集者でもある。
■橋本倫史
1982年生まれ。『HB』編集発行人。ミニコミらしからぬ独自の切り口で編集された特集記事に定評がある。また、ZAZEN BOYSのアメリカツアーにカメラマンとして同行し、ルポルタージュを同誌で掲載したり、『en-taxi』でライターを務めたりとその活躍は多岐に渡る。
■黒瀬陽平
1983年生まれ。美術家。アニメ評論家。見開き1ページを一つのコンテンツの単位とし、様々な批評家を登場させるという新しいスタイルの批評誌『Review House』の編集委員。東浩紀・責任編集の批評誌『思想地図』(日本放送出版協会)に公募論文が掲載されたことで一気に注目される。
■武田俊(司会進行)
1986年生まれ。KAI-YOU代表。『界遊』編集発行人。「世界と遊ぶ文芸誌」をキーワードに紙の上での表現の在り方を問う。表現を通じた「対話」をテーマとし、そのコンテンツ内容は文芸誌でありながらマンガ・アニメから食文化・お笑い・女子高生までと多種多様。イベント企画/司会、ライターも務める。歌人。










