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岩本愛子×山口冴子 『Girls' Zone 02』展
現代アート業界では金曜か土曜に「オープニング」や「レセプション」と呼ばれる、一般展示前に関係者向けにお披露目する会が催されるのだが、実は都内だけでもギャラリーは相当な数に及び、したがって週末は「オープニング」のハシゴとなる。
先週の金曜日(8/8)も同様だった。森美術館ではまるでお化け屋敷のようだったアネット・メサジェに続いて荒木珠奈、恵比寿のNADiff a/p/a/r/tに移動してNADiff GALLERYの『昭和40年会の東京案内2008』(いずれも発売中の本誌9月号を参照)、magical, ARTROOMにG/P galleryと回ったところで本誌連載「スラッシュ/アート」でお馴染みの工藤キキ氏と合流。Art Jam Contemporaryへ移り、岩本愛子と山口冴子による『Girls' Zone 02』展を観た。
岩本愛子は、巨大なヴィトンのかばんの中に自ら入りファッション誌を読むパフォーマンス<BAG>や、巨大なフロアに自分の洋服をずらっと並べた中に自分も寝転ぶパフォーマンス<DOLL>といった過去の作品で、自身の愛用物を肥大化させることで主客状態にあった自分と対象物との関係性のバランスを揺らがせるシリーズを発表している。
今回の作品はストッキングを全身に身に付ける<STOCKING>に近いが、顔にも手にも着けたストッキングは地肌色ではなく白、(ほぼ)全身タイツの状態に赤いリボンとデニム地のワンピースを着て野原で花々と戯れるという、サンリオが世界に誇る子ネコ型キャラに身を扮したファンシー(?)なポートレイトである。生身ゆえにデフォルメなどされておらず、タイツの穴からは目と女性の頭髪だけが見え、お世辞にも可愛いキャラとは言いがたい。「なぜ?」と当然の驚きを持って作品を観ていると、挙句の果てにそのタイツ姿の女性(多分)の実物がギャラリーに登場。しかも4人。天井に唐突に吊るされた赤いリボンを頭に乗せる、というパフォーマンスを行い始めると、妙に緊張感のある異様な雰囲気に包まれた。
「『太る』とは、体を膨らませることで隣にいる好きな人に近づくための行為だ」のようなことを言ったのは寺山修司だったか。好きであるが故に近づいていく、しまいには同化してしまう、という作家の対象へのアブソープションが、ナルシシズムの欠片もなく健康的に暴発して噴出していたところがこの人の才能だろう。岩本自身がキティちゃんを好きかどうかはさだかではないが、自分を「物語る」卑近なマテリアルを客観視することで爆破していく、テロのような潜伏した視線を感じた。
正直なところ、岩本のパフォーマンスが強烈過ぎて山口冴子の映像・ドローイング作品があまり頭に入ってこなかった。恵比寿の後、渋谷に移動してナンヅカアンダーグラウンドでAlexander GelmanとPaul Davisの展示を観たものの、脳裏によぎるのは無言で戯れる白タイツの姿だった。(SV編集部OK)
岩本愛子のパフォーマンスの模様から。Art Jam Contemporaryで9月3日まで開催中。
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