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Geert Van Kesteren 『Baghdad Calling』
デジタルカメラやカメラ付携帯が普及した現在では、"撮影"という行為自体はもはや特別な行為ではなくなった。それは、写真を"見せる"という行為についても同じ。その気になればブログ等で誰もが簡単に写真を見せることが可能になった昨今、何をもってプロの写真行為を一般のそれと差別化するのかということが、改めて写真家に問われているといってよい。
ここ数年、この問いについて特に敏感な反応を示したのはドキュメンタリー写真の分野だろう。9・11の衝撃映像が全世界に生中継で流れ、ネット上にあらゆる場所/事件の画像がアップされるような状況下では、"目撃"することに主眼を置いてきたこれまでのドキュメンタリーは通用しない。戦争がテロに変わり、事件の現場が公の場に近づく。不特定多数のデジカメ、携帯のカメラ、監視カメラ等があらゆる場所に向けられる。これらの現実を前にして、ドキュメンタリー写真が以前のままでいられなかったのは当然のことだったに違いない。ある者は"より閉ざされた場所"へと足を運び、またある者はドキュメンタリーにおいてタブーとされてきた"演出"を用いて、現実を受け止めることの衝撃を高める......こうしてドキュメンタリー写真は、時代の当然の要求に応えるため、写真界全体を俯瞰しても最も実験的で意欲的なフィールドへと姿を変えていったのだ。
そんなドキュメンタリーの新傾向を決定づける一冊がある。それがこの度、オランダのEpisodeより発売されたGeert Van Kesterenの『Baghdad Calling』だ。以前に暗視スコープの画像を用いたイラクの戦場写真を発表するなど、一風変わったドキュメント作品で話題をさらった彼が、この本で取り組んでいるのはなんと"写真の収集"である。爆弾が投下される街の様子、家族の寄り合い、移住の喜び......決して一人では為し得ぬ数の"目撃"があり、ハードな状況下で暮らす人々の様々な感情を写し込んだこの本はつまり、彼が自らの撮影行為に重きを置かず(写真集には彼の写真も含まれているが)、ヨルダン、シリア、トルコへと逃げ出したイラク人難民から彼ら自身が撮影した写真を集めることに力を注いだ結果なのだ。
「新しいドキュメンタリーとは何か? 写真家の仕事とは何か?」。写真界に新たな展開迫ったヴィジュアル環境の変化を逆手にとり、意外な方法で写真を紡いでみせた彼はここで、"写真を見つめる"ことの重要性を説いてもいる。「如何に真摯に、如何に時間をかけて、撮られた写真に向き合えるか」。それはドキュメンタリーのみならず、全ての写真分野に共通した"プロ作家の重要な作業"であることは言うまでもない。(編集部O)


■写真キャプション
Geert Van Kesteren 『Baghdad Calling』(Epidode Publishers, 08)
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